ただ、それだけの為に

こないだTVみてたら野生のフンボルトペンギンの話題があって。
彼らは斜面に営巣して卵を温め雛を育てるんだけど、餌を取る為に何度も海と巣を往復するのね。陸地を歩くの苦手なくせに。ところが、海辺にはオタリアっていう、アザラシの一種がいる。これはペンギンにとっては完全に天敵で、捕食者。これが何百頭とコロニーを作っている。
で、ペンギンはどうするのか。
どうもしない。ていうか、コロニーの真ん中をそのまま突っ切る。餌が必要だから。海までの最短距離だから。でも相手は全員捕食者。なのにペンギンは、その覚束無い足取りで下町のおっさんが人混みを抜けるみたいな気軽さで、ちょいとゴメンよ、くらいの勢いで突破する。踏みつける。足遅いくせに。何の策も無いくせに。凄まれてもとりあえず進む。
言ってみれば、食休みしてるヤ○ザの大集団を押しのけて冷蔵庫を目指すような感じ。届く範囲にちょっと腹減ってる奴がいたらお終い。確率が逆のロシアンルーレット。今回は無事だった、それだけ。

勇気と無謀を履き違えるな、という台詞が頭をよぎったけど、きっと勇気でもなければ無謀でもないんだろう。
ただ、生きてるだけなんだよな。