ぼくらの空想ゲーム

僕たちファミコン世代のプレイヤーには、必ず一つや二つ、人生の徒花として心に深く刻み込まれるクソゲーとの出会いがありました。
なけなしの小遣いを貯めて、ファミコン雑誌の記事とにらめっこして選びに選んだ一本が紛うことなきクソゲーだったあの日のトラウマ。

そんな現実を認めたくなくてしつこくプレイして、クソみたいな難易度の即死ゲーが妙に上手くなったり、逆に易しすぎて当日のうちにクリアしたものの、何周も何十周もクリアを繰り返して役に立たない裏技やウル技見つけて投稿しちゃったり。


あの時代のクソゲーは、実に本当に、一点の曇りもなくクソゲーでした。


すっかりコンシューマゲームをやらなくなってしまった僕ですが、今でもああいうクソゲーってあるんですかね?つまらないゲームのことじゃないですよ、クソゲーってのは。やっぱりついついムキになって何度もやってしまう魅力というか、前のめりになっちゃう何かがあるんですよ。バランスがどうの操作性がどうのと文句垂れながらコントローラは手放さない感じ。



ぐんまのやぼう」とかもちょっと違いますね。見た目のやる気のなさには光るものがあるのですが、クソゲーと呼ぶにはなかなか良く出来ちゃってるゲームです。とうとう3DSにまで進出して、大変楽して儲かってるようで不愉快素晴らしいことです。おめでとうございます[Twitter:@RucKyGAMES]さん。アプリ開発者の星ですね。

ニンテンドー3DS|ぐんまのやぼう for ニンテンドー3DS|Nintendo
『ぐんまのやぼう』とは、地図上に現れる、ねぎ・こんにゃく・きゃべつといった特産品を収穫し「G(GUNMA)」を手に入れて、集めた「G(GUNMA)」を使って、他の地域を「せいあつ」して群馬県にしていく ...

ぐんまはともかく、実際スマートフォンのアプリストアにこそクソゲーの系譜は受け継がれているのかも知れません。個人開発者がバンバン世に送り出せる市場ですから。探せばきっとそこに、懐かしいROMカセットの匂いを纏った宝が眠っているはずです。問題は、その原石を探し当てるには、あまりにも鉱脈が広大だってことです。クソゲーで検索したって出てこな…




330件か。
うん。
出るは出るけど、なんかこう、自称とかじゃなくてさ。ていうか自称クソゲーを一つ一つ落として自分好みのクソゲーかどうか試すってそれ何の修行ですかっていう。




そんなことをつらつらと考えていたら、探すまでもなく向こうからやって来ました。ファミコン世代の脳髄を鷲掴みにするような素敵なクソゲーAstrowanderer」です。

※価格は情報取得時点のものです。ご購入前にその時点の価格を確認願います。

Astrowanderer 1.0.0 (無料) App
カテゴリ: ゲーム
販売元: Toshiaki Nakamura(サイズ: 23.1 MB)



これは素晴らしいですよ。
ちゃんと高解像度画像を使ってるのにどこか8bit時代を彷彿とさせるグラフィック。むやみに雄大なクラシックBGM。説明書(ストアの説明)に書かれた、いやにしっかりしたバックグラウンドストーリー。舞台が宇宙なのもポイント高いですよね。RPG隆盛以前のファミコン初期は宇宙のゲームと忍者のゲームは名作とクソゲーの坩堝でしたからね。どっちに転ぶか分からないドキドキ感。いや忍者ゲーはそんな多くないか…。





まず、スタートしてどういうゲームかな?と何もしないでいると無条件に死にます。あっという間に画面の下に飲み込まれてゲームオーバーです。


2回目はスタートして、操作を覚えようと何度かタップしてるうちに、枠外に飛び出してゲームオーバー。これこれ。これだよこの理不尽な即死。普通この手のゲームって画面の端には謎の壁があってはみ出したりしないじゃないですか。でもこのゲームではコンマ2秒で飲み込まれる宇宙の残酷さが再現されています。


続けて3回目。軽く操作の仕方が見えた直後、やっぱり想定外の角度に勢いよく突進して隕石に衝突、ゲームオーバー。さっきまでの信頼すべき相棒である一方の指が、僅かなタッチで凶器と化します。


4回目。躱すコツをすこし掴んだかに見えたところに、一瞬で逃げ場を失う強制縦スクロールの隙間無き弾幕。無理無理、これは無理。


実に理不尽!

だが、それがいい。実に由緒正しき格式あるクソゲーでです。


まぁとにかくよく死にますよ。
隕石の間を華麗に抜き去ろうとすればスピードの速い隕石がオーバーラップしてきてあっという間に完成するゾーンプレス。唯一のアイテムである「エアーボール」を拾おうとサイドから駆け上がればライン際から戻れなくなったプレイヤーがボールごとラインを割ってそのまま一発退場
見えないゴールに向かってバックパスも許されない無限のドリブル突破を続けなければいけないのです。しかも超フィジカル弱いスペランカースペランカーといえば、帰ってきてからの多村選手は大した怪我もなく頑張ってくれていて頼もしい限りです。



ちなみに、エアーボールが取れずにAirが0になって窒息という死亡ルートもあるらしいのですが、そもそもAirがゼロになるまで生存できた試しがありません。


そんなゲームなのについまたスタートをタップしてしまう。これこそがクソゲーの本質ですよね。クソゲーは楽しいんです。悔しいっ!でもタップしちゃう…っ!みたいなアレがこう、何て言うかそんな感じ。わかるでしょ?



このゲーム、ひとつ惜しむらくは無料であるということ。あーあ、こんなゲームに金払っちゃったよ、って苦笑いしながらスタートボタンに指を伸ばすのが大人の嗜み方ってものです。

そんなわけで殊更クソゲー愛好家でなくとも損はしないと思いますので、ぜひ一家に一本、如何でしょうか。

※価格は情報取得時点のものです。ご購入前にその時点の価格を確認願います。

Astrowanderer 1.0.0 (無料) App
カテゴリ: ゲーム
販売元: Toshiaki Nakamura(サイズ: 23.1 MB)


とまぁ、散々クソゲークソゲー書いて来ましたが、開発者のとし([twitter:@toshi586014])さんは数か月前から熱心にアプリの作り方を勉強して、これが初リリースのアプリです。デビュー戦です。きっと今後出るアプリは色々な意味でどんどん洗練されて来ると思うのですが、このセンスは大事にして頂きたい。


今思えば、クソゲーってのはアイデアひとつで世に送り出された、可能性の卵だったわけです。粗削りだけど、キラキラ光る情熱とかがうっかりそのまま溢れだして棚に陳列されたような、良き時代の挑戦者。だからこそ僕らもついムキになって夢中になって、いつのまにか時計の針がぐるりと一周してしまうような、そんな時間を過ごせるゲームだったのだと思います。そんな情熱を感じさせてくれる、あの頃の熱を思い出させてくれる、そんなアプリ。


と、このくらいいい感じに〆ておけばそこまで怒られずにすむかな…。



written by iHatenaSync