リスクヘッジの最適解

朝電車に乗っていたら、「5分程度の遅れ」の運行を詫びるアナウンスが流れた。原因は乗客の荷物がドアに挟まったということだった。ラッシュ時でも人がドアから溢れるような混み方をする路線ではないから、おそらくは乗客自身の不注意だろう。
それでも鉄道会社は詫びる。
5分遅れといっても、まさに止まっていたその電車の乗客に詫びるならともかく、ラッシュ時の、既に運転再開している中での5分である。再開したのも30分以上前だ。僕と同じ電車に乗っていた人たちは乗るはずの車両が代わっただけで、元々乗ろうとしていた時間帯には乗れている。若干の誤差はあるかもしれないが、ストレスも無く概ね予定通りに目的に駅につけるわけだ。
それでも鉄道会社は詫びる。
つまりはこれが、日本の企業のリスクヘッジなのだろう。多少なりとも迷惑をかけた「可能性があるなら」襟を正して謝る。感情を必要以上に逆なでしないという方策を持って、もしかしたら起こる「かもしれない」トラブルを回避なり軽減なりするための企業戦略だ。

一方で、「謝罪」=「責任を認める」。即ち、謝罪が法廷の場において不利になる。そういう国にはそういう国の、即ち「謝らない」リスクヘッジも存在する*1

日本企業がそういう国でトラブルを起こしたとき、逆にそういう国の企業が日本でトラブルを起こしたとき。物事の良し悪しではなく企業戦略として、それぞれのステージにおいて最適解を柔軟に選択できるのが賢い企業というものではないのかな。

*1:一方でそういう国にあって敢えて責任を認めて「潔く負ける」という戦略もありうる。有効かどうかはその場の条件と判断だろう。