疫学というアプローチ

ゲーム脳が何故駄目でトンデモなのか、というのは以前提示したblogやインタビュー記事などを見ていただければ分かるとおり、つまるところ因果関係の証明方法があまりにも胡乱で、実のところ何も証明できていないからだ。
 その上その証明に関する個々の説明同士が矛盾しているという体たらくでは信じろという方が無理な話というもの。

ゲーム脳に限らず、ニセ科学全般において因果の証明手段が悉く間違っていてまるで証明になっていないけど、それっぽい文章に仕上げることで信じてしまう集団を作り上げることが問題なのだろう。彼らは正しい「因果の証明」をする手段を持たないのかもしれないし、知っていて避けているのかもしれない。水からの伝言に至っては、この程度のネタ*1になっても何も言い返せない程度の中身しかない。

では、ゲーム脳のような「問題」はどのように因果を証明すればよいのか。川端裕人さんのblogで、素人の僕にも非常に分かりやすい「疫学」的な研究手法について説明されていたので紹介しておく。
なぜ症例対照研究をしないのか(ゲーム脳をめぐる謎、および提言)(「リヴァイアさん、日々のわざ」さんより)
僕自身この手の「学説」が出てくる度に、「これを検証した人は、それ以外の要因についても平等に可能性を考え、検証したのだろうか」という疑問を感じていたのだけど、このエントリの症例対照研究の説明における「交絡」の説明など実に分かりやすい。疫学を正しく検証方法として運用するなら当然考慮されるべき交絡*2の問題が、やはりニセ科学の世界では欠落しているのだろう。先に結論ありきの研究においては軽視されがちというか、下手すると「敢えて」無視するのが彼らの方法論と見るべきか。

ま、何にせよゲーム脳それ以前の問題であるということで、川端さんの言葉を引用しておきます。

いろいろ書いたけれど、にもかかわらず、ぼくはゲームと凶悪犯罪の関係を調べる疫学研究は、「別にいらないんじゃないか」と思っている。
なぜなら……だって、少年の凶悪犯罪、増えていないもの。

*1:このネタは好きだけど。ニセ科学を素人が笑い飛ばすにはこのくらいのやり方が丁度いい。

*2:普通に使ってみているけど、この言葉自体は今回はじめて知りました。使い方あってるかな…