3秒間だけ僕らは
前回のエントリでも取り上げたiOS5の「ロック画面からのカメラ起動」。β版とか触ってない僕にはパスコード設定されてる場合とか細かいところは分からないですが、映像見る限りやっぱり凶悪なスピードですよね。
で、こういうものが公式機能で出てくると意味が無くなっちゃうのかもしれないけど、とりあえず現時点でカメラアプリの起動速度ってどのくらい違うのよ?ってのは前から気になっていました。
なので僕の撮影用メインアプリ3つと標準カメラで、起動速度のベンチマークテストを行ってみました。
間違っても「最速起動カメラアプリ決定戦」ではありません。そのためだけに「高速起動」を謳ってるアプリ全部買って試すとか無理。
で、対象は以下のアプリ。なんかもう当blogでは常連組ですね。あと試験した機種は「iPhone 3GS」「iPod Touch 4」です。お互いにもう一方でストップウォッチアプリを使用しての計測。
※価格は情報取得時点のものです。ご購入前にその時点の価格を確認願います。
OneCam(マナー・連写) 〜フリックで簡単シェア〜 4.5.0 (¥100)
カテゴリ: 写真/ビデオ
販売元: Walker Software(サイズ: 3.5 MB)
※価格は情報取得時点のものです。ご購入前にその時点の価格を確認願います。
Camera+ 4.2 (¥170)
カテゴリ: 写真/ビデオ
販売元: tap tap tap(サイズ: 26.5 MB)
※価格は情報取得時点のものです。ご購入前にその時点の価格を確認願います。
プロカメラ 3.0.1
iPhone、iPod touch および iPad 互換 iOS 4.0 以降が必要
価格: ¥350
更新: 2011/02/11
(2013.10.06追記)プロカメラは現在公開されておりません。「ProCamera 7」に移行しています。
※価格は情報取得時点のものです。ご購入前にその時点の価格を確認願います。
ProCamera 7 5.0 (¥85)
カテゴリ: 写真/ビデオ
販売元: Cocologics(サイズ: 30.2 MB)
テスト!テスト!テスト!
それぞれのアプリを10回ずつ起動して、「アイコンをタップした瞬間」から「撮影可能になった瞬間」の時間を計測し、その平均をとりました。「撮影可能になった瞬間」の判断はカメラからの映像が表示された瞬間です。
どのアプリも実際ほぼその瞬間から撮影可能なので、目視判定レベルとしては十分でしょう。
また、条件は
- メモリ状態をできるだけ合わせるため、他のアプリは全て停止
- 初回の数値は破棄(本当に気になるのはこっちかもだけど、同条件で統計化しにくいので)
- マルチタスク状態からの起動はしない(毎回バックグラウンドから消す)
- ジオタグ機能は全アプリオフ
- 操作の慣れや癖の影響を出さないため、同じアプリの計測は連続させない
- 起動は常に左手、ストップウォッチは右手で、明らかにずれた場合は破棄
というわけで毎回起動したアプリをバックグラウンドから消して別のアプリを起動して、を最低80回は繰り返した事になります。まるで暇人みたい。皆さんが家族でお出かけしたり友人と映画を見に行ったりオフ会で楽しく大集合してる土曜日の午後にこんなことやってたんですよ。びっくりですね。くそっ!
見ての通りベンチマークとは言いつつゴリゴリの手動テストですので、あくまで参考程度にご覧下さい。
機種 | 標準カメラ | OneCam | Camera+ | プロカメラ |
---|---|---|---|---|
iOS4.3.3 | 1.9.0 | 2.2.1 | 3.1 | |
iPhone 3GS | 3.70秒 | 3.866秒 | 3.387秒 | 4.74秒 |
iPod touch 4 | 2.338秒 | 2.818秒 | 2.359秒 | 3.636秒 |
iPad2やiPhone4は誰か調べて下さい。
あと、この結果がおかしいと思う人もやってみて下さい。挑発とかじゃなくて僕の手持ち機の結果がこうなったと言うだけで、絶対の自信があるわけでもないので違う結果が出るなら興味あります。
どのアプリも10回分の計測で大きなばらつきは出なかったので、リスト上の差は(数字の妥当性はともかく、同条件下の比較としては)概ねアプリの起動性能差と考えていいと思います。見比べて分かるのは、機種の能力に応じて確実に高速化してる標準カメラ。さすが純正。やっぱりiOS5は脅威ですね。
ていうか現時点でそれに肉薄する(3GSでは完全に凌駕している)Camera+は化物か…。
追記1:
iPhone4での計測を[twitter:@yoppal]さんが試して下さいました。同じ条件で、かつ爪を切って臨むという気合いの入り用で。感謝です!やっぱりCamera+の性能は異常ですね。連邦の白いアレですね、最早。
機種 標準カメラ OneCam Camera+ プロカメラ iPhone 4 2.73秒 2.815秒 2.60秒 3.617秒
実際、カメラを使用する上でこのコンマ数秒の性能差は殆ど意味はないでしょう。考えれば分かる事ですが、カメラは画面が表示されてから構図を決めて、ピントや露出を合わせます。人が頭と手を使ってロスする時間に比べたら、実質的にはこのレベルの差ならほぼ影響は無いでしょう。あ、撮りはじめてから構図を合わせれば良いビデオカメラはまた別ですよ。
ちなみに参考までに、標準カメラを「ビデオモード」の状態で起動した場合は少し遅いみたいですね(iPod Touch 4で平均3.0〜3.1秒くらい)。
ロード!ロード!ロード!
では、何故わざわざこんな面倒くさいテストをやったのか?この結果にはもうひとつ裏があります。
実はこの中のひとつ、OneCamはつい先日のアップデート(1.9.0)で、起動に関する変更を行っていました。それはスプラッシュ(ロゴ画面)をなくしたこと。
UI設計をする上で、アプリ起動中等のロード時間をどうごまかすか、というのは思案のしどころです。アプリの初期状態の画面をそのまま出しても、実際に操作出来るようになるまで時間がかかるとユーザは不満を感じます。そういうときに取りあえず企業ロゴやアプリのロゴを表示して視覚的にアクセントを加えるのがスプラッシュです。
ついでに、更に時間がかかる場合は「無反応」「固まってる」と思われないためにプログレスバー等アニメーションで進行中を表す事になりますが、iPhoneアプリではそんなに見かけないですね。カメラアプリだと「Camera Genius」とかですね(そして上の各アプリとは比較にならないほど遅い)。
スプラッシュ表示は本来表示しなくても良い画像を敢えて表示するので、若干のロスが生じます(つまり待たせる間の印象緩和のために、更に若干遅くなる)。このロスの有無が殆ど影響しない程度に起動全体の時間がかかるアプリ、例えばゲーム等ではそれなりに効果的です。でも、カメラの場合はどうでしょうか?
シャッターチャンスにアプリを起動して自分が操作出来るようになるまでの時間は長く感じます。「この瞬間を逃さないうちに早く操作したい」という焦燥感、ユーザ心理が余計にその時間を長く感じさせるのです。
これでは「ロード時間の心理的緩衝材」としてのスプラッシュの意味をなしていません。つまり、撮影のためのアプリには無い方が良い、というのが僕の考えです。
ちなみにこれは「プロカメラ」のスプラッシュです。上のテスト結果は(スプラッシュだけが原因と言う事は無いと思いますが)確実に他のアプリより遅いですね。
プロカメラは設定画面への移動時にもこれを表示するのが、印象面で非常にマイナスに働いてると思います。
一方、OneCamは当初採用していたスプラッシュを外した。僕はこの点は(実際に改善される時間以上に)ユーザ心理的に大きな改善だと思います。快適なUIとは、ユーザの心理的な不快感を如何に緩和するかであるとも言えます。
ちなみに、今回のテストをする前に、実はiPod Touch 4のほうにOneCamの古いバージョン(スプラッシュ表示あり)が残っていたので、アップデート前に同様のテストをしておきました。
結果は10回平均で「3.097秒」。上記のバージョンが「2.818秒」ですから0.3秒弱、スプラッシュなしの方が速い事になります。ちなみに旧バージョンで3秒を切ったのは10回中1回、現行バージョンは一番遅くて2.94秒だったので、有為に差があったと言って良いと思います。
心理面だけでなく実際の時間もやっぱり僅かながら高速化されているようです。
実際に計測してみると起動時間を少しでも短く、少しでも速く、という開発者のこだわりが感じられて良いですね(プロカメラもあれだけのアプリにしては速いと思います)。起動速度への挑戦、これからも応援したいです。
追記2:
OneCamの開発者、[twitter:@AppleWalker]さんからコメント頂きました。OneCamそんなに遅くないよ!負けてないよ!って言われるかと思ってたら。同業開発者も認めるCamera+の脅威!
今回ストップウォッチはこのアプリを使いました。画面を見ずにスタートストップが容易に出来て使いやすいアプリです。デザインも良いんですよ。
※価格は情報取得時点のものです。ご購入前にその時点の価格を確認願います。
BigStopWatch 2.4.2 (無料)
カテゴリ: ユーティリティ
販売元: Yuki Yasoshima(サイズ: 233 KB)